叙勲式は、長年の功績が認められ、国家から勲章を授与される特別な式典です。そのため、当日は格式の高い場ならではの服装マナーが強く求められます。男女ともに適切な正装を選ぶことで、受章者としての品格を高めるだけでなく、周囲にも良い印象を与えることができるでしょう。
本記事では、叙勲式の服装選びの基本ルールや男女別の正装マナー、避けたい服装例、小物の選び方まで、順を追ってわかりやすくご紹介します。
目次
- 叙勲式とは?服装の重要性
- 叙勲式の基本マナーと装いの考え方
- 男性向け:格式を保つ装いのポイント
- 女性向け:上品で控えめな華やかさを意識
- 避けたい服装とNGマナー
- 小物選びで仕上げる“きちんと感”
- 佩用金具について知っておきたいこと
- まとめ
叙勲式とは?服装の重要性

叙勲式は、国や公共団体が個人の功績を称え、勲章を授与する晴れの場です。とくに皇居で行われる式典では、細やかな礼儀作法と厳格なドレスコードが求められます。受章者としてその場にふさわしい服装を整えることは、自身のこれまでの歩みへの敬意であり、周囲の方々への配慮にもつながります。
なお、服装については「受章者あて通知書」に明記されたドレスコードに従うことが大前提です。叙勲式は種類も多く、実際に参加した経験のある方が少ないため、細かい内容が不明な場合は、事前に省庁へ確認しておくと安心です。
叙勲式の基本マナーと装いの考え方

まず、男性であればモーニングコートの着用が最も格式高いとされています。かつてはブラックスーツ(略礼装)が選択肢に入る場合もありましたが、現在ではブラックスーツでの参列はほとんど見られず、モーニングが基本とされています。
一方、女性は和装であれば色留袖、洋装なら落ち着いたフォーマルドレスが適しています。なお、黒留袖は本来、結婚式など慶事における第一礼装として位置づけられていますが、皇室では黒い着物全般を喪服とみなす風習があるため、叙勲式の場では避けるのが一般的とされています。
いずれの場合も、服装は派手すぎず、控えめで上品な印象を大切にするのが基本です。
男性向け:格式を保つ装いのポイント

男性の装いは、基本的にモーニングコートが最も正式で格式の高いスタイルです。 黒のジャケット(前が短く、後ろが長いデザイン)に縞模様のスラックス、白シャツ(ウィングカラーまたはレギュラーカラー)、白黒ストライプまたはシルバーのネクタイ、そして黒の革靴(エナメルはNG)という組み合わせが定番となります。
迷った場合は必ずモーニングコートを選ぶのが安心です。厳粛な場にふさわしい装いを心がけましょう。
女性向け:上品で控えめな華やかさを意識

女性の装いについては、叙勲や褒章の種類によって異なる場合があります。和装が許可されているケースでは、色留袖が最適とされていますが、訪問着や色無地でも良い場合もあります。ただし、受章者あて通知書や公式な案内でドレスコードが指定されている場合は、それに必ず従いましょう。
一方で、叙勲や褒章の種類によっては和装自体がNGとなることもあり、服装選びには注意が必要です。
洋装を選ぶ場合は、ロング丈のワンピースやスーツスタイルなど、落ち着いた色味と控えめなデザインを意識してください。色は黒や紺、グレー、ベージュなどが一般的で、過度な肌の露出や派手なデザインは避けましょう。靴は低めのヒールのパンプスが理想です。
避けたい服装とNGマナー

叙勲式は人生の節目にふさわしい式典です。だからこそ、細かな部分にも注意が必要です。
たとえば、シャツにアイロンがかかっていない、靴が汚れている、ネクタイの柄が派手すぎるといった、些細な点が全体の印象を損ねることもあります。
また、サイズが合っていない服(ダボつきや過度なタイトさ)や、装飾が過剰なアクセサリーも避けたほうがよいでしょう。男性であればエナメル素材の靴は不向きですし、女性も華美すぎる装いは控えるべきです。
つまり、基本となるモーニングコートや色留袖、フォーマルドレスの着用を前提としたうえで、細部まで「場にふさわしいかどうか」を判断する姿勢が大切です。
小物選びで仕上げる“きちんと感”

服装だけでなく、小物類も全体の印象を左右します。男性であれば、白無地のポケットチーフや控えめなカフスがよく合います。女性は、パールのネックレスやイヤリングなど、落ち着いた輝きのあるアイテムが定番です。
バッグは小ぶりでシンプルなものを。時計も控えめなデザインを選び、華やかすぎるものは避けるのが無難です。
佩用金具について知っておきたいこと
叙勲式では、勲章を美しく、そして正しく身につけるために「佩用金具(はいようかなぐ)」というアイテムが活躍します。
この佩用金具を使うことで、モーニングコートの生地に穴を開けることなく、勲章を胸元にしっかりと固定することができるのです。
せっかくの晴れ舞台。大切な装いを損なうことなく、勲章も美しく引き立ててくれる佩用金具は、見落としがちな存在ですが、実はとても心強いアイテムです。

叙勲式は、これまでの功績をたたえる大切な晴れの場。服装は「通知書に記載されたドレスコードに従う」ことが基本ですが、そのうえで場にふさわしい品格ある装いを整えることが重要です。
男性はモーニングコート、女性は色留袖やフォーマルドレスを基本に、小物や佩用金具、振る舞いにも気を配りましょう。人生に一度の晴れ舞台だからこそ、心からの敬意と準備をもって臨みたいですね。

執筆者
大谷真司 イデアス株式会社代表取締役
タキシードレンタルドットコムの最高責任者。
大阪市淀川区にて40年以上にわたり礼服の製造・開発に取り組んできた実績を受け継ぐ企業。
すべての縫製工程は日本国内で行われており、車椅子用のユニバーサルデザインモーニングコートや脚長効果のあるヒールアップシューズのレンタルサービスも展開。
結婚式や各種式典で使用されるフォーマルな衣装を、品質に強いこだわりを持ち提供。
1990年 大阪の総合結婚式場において洋装部の責任者としてキャリアを開始。
1995年 全日本冠婚葬祭互助協会の2級冠婚士資格を取得。
1996年 法人向け貸衣装部の責任者に就任。
2006年 独立。宅配レンタル専門の「タキシードレンタルドットコム」を創業。
2016年 日本フォーマル協会のフォーマルスペシャリストゴールドライセンスを取得。