燕尾服は、夜の正式な礼装として古くから格式ある場で用いられてきた装いです。中でも、その特徴的な「後ろ姿」は、他の礼装と一線を画す存在感を放ちます。本記事では、燕尾服の後ろのデザインが持つ意味や、着用シーン、着こなしのポイントまで詳しく解説します。
目次
- 燕尾服とは?その特徴と由来
- なぜ“後ろ姿”が重要視されるのか
- モーニングコート・ディレクターズスーツとの違い
- 着用シーンと時間帯(夜の第一礼装としての位置づけ)
- 燕尾服の構成|後ろのカットと全体のバランス
- 着こなしのポイント|動き方・立ち居振る舞いにも注意
- レンタルする際の注意点と試着の大切さ
- まとめ:後ろ姿まで品格を宿す燕尾服の魅力
1. 燕尾服とは?その特徴と由来
燕尾服(テールコート)は、19世紀初頭のヨーロッパで誕生した男性用の夜間正礼装です。ジャケットの後ろ部分が燕の尾のように二つに分かれて長く伸びていることから、スワローテールコート(テールコート)という名前が付きました。当初は乗馬用のコートでしたが、次第に貴族階級を中心に晩餐会や舞踏会などで用いられる夜の第一礼装として定着しました。
現在も、国家行事や晩餐会、舞踏会、叙勲式など、極めて格式の高い場で着用され続けています。
2. なぜ“後ろ姿”が重要視されるのか

燕尾服の最大の特徴は、その後ろ姿です。ジャケットの後ろが腰から大きく割れて長く伸びており、動いたときの揺れやドレープ感が非常にエレガント。後ろ姿が美しく見えるようデザインされているため、立ち居振る舞いの一つ一つにも品格が求められます。
特に国家的な儀礼や舞踏会では、背中で語る所作や存在感が印象を大きく左右するため、前からだけでなく「後ろ」まで気を配る装いが求められるのです。
3. モーニングコート・ディレクターズスーツとの違い
種類 | 着用時間帯の目安 | 格式 | 主な用途 |
燕尾服(テールコート) | 夜間(18時以降が基本) | 第一正礼装 | 晩餐会、舞踏会、国家行事 |
モーニングコート | 昼間(原則18時まで。ただし近年は夕方以降でも着用例あり) | 第一正礼装 | 結婚式、叙勲式、卒業式など |
ディレクターズスーツ | 昼間~夕方(ビジネス~セミフォーマルに対応) | 準礼装 | 式典、表彰式、ビジネス公式行事など |
時代とともに着用時間帯の厳密な区分は緩やかになっており、特にモーニングコートやディレクターズスーツは夕方以降でも着用されるケースが増えています。 このように、燕尾服は「夜の最上級の礼装」として他の装いとは一線を画しています。
4. 着用シーンと時間帯(夜の第一礼装としての位置づけ)
燕尾服は基本的に夜間(18時以降)における第一礼装とされています。現代では、着用シーンは限られていますが、以下のような格式高い場面では今もなお重要な装いです。
- 国家主催の晩餐会
- 皇室行事(夜の部)
- 舞踏会・レセプション
- 高級クラシック音楽の公演(主催者・出演者側)
なお、昼の時間帯にはモーニングコートを用いるのが原則とされています。
5. 燕尾服の構成|後ろのカットと全体のバランス
燕尾服の構成は以下の通りで、特に後ろのカットラインに特徴があります。
アイテム | 特徴 |
ジャケット | 前が短く、後ろが長く中央で割れて燕尾状になっている |
パンツ | 黒無地で日本では2本の側章(サテンやコード刺繍など)付き |
シャツ | 白のウイングカラー、プリーツ入りやイカ胸シャツが一般的 |
ベスト | 白のピケ素材。丈は短めでウエスト位置を美しく見せる |
ボウタイ | 白無地の蝶ネクタイ |
靴 | 黒のエナメル素材、プレーントゥ |
6. 着こなしのポイント|動き方・立ち居振る舞いにも注意

燕尾服を美しく見せるためには、姿勢や動作への配慮が不可欠です。
- 背筋を伸ばし、静かに歩くことで後ろの燕尾が自然に揺れて美しく見えます。
- 着席時には燕尾部分を整えてから椅子に座ると、シワを防げます。
- 手の動きも控えめに、全体として「静の美しさ」を意識しましょう。
こうした細部への配慮が、燕尾服の魅力を最大限に引き出します。
7. レンタルする際の注意点と試着の大切さ

燕尾服は頻繁に着るものではないため、レンタルでの対応が主流です。ただし、以下のポイントを押さえておくと安心です。
- サイズが合っているか事前に試着する
- シャツやベスト、タイなどが含まれているかを確認する
- ジャケットの後ろ姿がしっかり決まるサイズ感かを意識する
エナメル靴やカフス、ポケットチーフなどの小物も忘れずチェックしましょう。
8. まとめ:後ろ姿まで品格を宿す燕尾服の魅力
燕尾服は、その特徴的な後ろ姿と立ち居振る舞いで、着用者の品格を静かに際立たせる礼装です。夜のフォーマルシーンにおいて、場にふさわしい存在感を放ち、見る人に強い印象を与えます。
前からの見た目だけでなく、背中や動き方までもが礼装の一部となる燕尾服。試着や丁寧な準備を重ね、自信を持って臨めるよう備えておきましょう。
執筆者
大谷真司 イデアス株式会社代表取締役。
タキシードレンタルドットコムの最高責任者。
大阪市淀川区にて40年以上にわたり礼服の製造・開発に取り組んできた実績を受け継ぐ企業。
すべての縫製工程は日本国内で行われており、車椅子用のユニバーサルデザインモーニングコートや脚長効果のあるヒールアップシューズのレンタルサービスも展開。
結婚式や各種式典で使用されるフォーマルな衣装を、品質に強いこだわりを持ち提供。
1990年 大阪の総合結婚式場において洋装部の責任者としてキャリアを開始。
1995年 全日本冠婚葬祭互助協会の2級冠婚士資格を取得。
1996年 法人向け貸衣装部の責任者に就任。
2006年 独立。宅配レンタル専門の「タキシードレンタルドットコム」を創業。
2016年 日本フォーマル協会のフォーマルスペシャリストゴールドライセンスを取得。